2.無理を減らす ‐ 生活環境・リズムに合わせる

 これまでの常識は、カロリーを減らすときに必要のないことを禁じてきました。無理なくカロリーを減らすために、まず、この常識には根拠がないことを明らかにします。
 その上で、あなたの生活環境・リズムに合わせて、減らしやすい食事を見つけます。

生活に合わせて食事を減らす

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暴飲暴食はしてもいい?

はい。暴飲暴食で摂っているカロリーは一定期間で見ると多くありません。ふだんの食事で「食事から減らすカロリー」を減らしておけば、暴飲暴食を今までどおり続けても問題ありません。

 「暴飲暴食を控えていたのに、思ったほど体重が減らなかった」という経験をした人がいると思います。

 かりに、月に2度外食の機会があり、2回ともふだんより1,000kcal多く食べたとしても、1日当たりにすればごはん40g(66kcal、ほんの1口)分です。たまの暴飲暴食をやめても、あなたが減らさなければならない食事から減らすカロリーには届かないことが多いでしょう。

 たまにする暴飲暴食よりも、ふだんの食事のように回数が多いことが、1年間というような長い目で見たときの「総摂取カロリー」を決めています。ですから、確実に体重を減らすためには、ふだんの食事からカロリーを減らすようにします。

 暴飲暴食を控えることは、冠婚葬祭や楽しみの我慢という無理をし続けることなので、挫折の原因になります。ふだんの食事からカロリーを減らしておけば、暴飲暴食を今までどおり続けても(今より以上はいけませんが)かまいません。

どの食事でも減らせる?

はい。人間の体には、エネルギー(カロリー)を貯えておいて、必要なときにそれを使うしくみが備わっているので、どの食事を減らしても問題は起こりません。
体のしくみを正しく理解すると、無理をせずに食事のカロリーを減らすことができます。

 朝食を食べない人は多くいます。また、忙しくて昼食が摂れないことがあったという人もいると思います。しかし、それが原因で失神したという人はいないはずです。もし、食事を食べないと血糖値が下がって失神するというのが正しければ、あちこちで交通事故が起こって大変なことになるでしょう。

 脳は、エネルギー(カロリー)源としてブドウ糖しか使うことができません。しかし、人間の体には、脳のブドウ糖を絶やさないために、肝臓に貯えられたグリコーゲンや筋肉の蛋白質からブドウ糖を作るしくみがあります(使われた筋肉の蛋白質は次に摂った食事の蛋白質で元に戻ります)。
 また、全く運動しなくても体温維持のためや、運動したときのエネルギー源として貯えられていた体脂肪も使われます。

 蛋白質や脂肪は体にたくさんあるので、たとえ数週間何も食べなくても、脳のブドウ糖や体が必要なエネルギーを送り続けることができます。ですから、体には必要なときにエネルギーを引き出し、余ったときには貯えておく「エネルギーを供給・貯蔵するしくみ」があるといえます。

 これまで、「子どもが朝食を食べないと貧血や低血糖になって朝礼で倒れたり、食事を減らすと体調が悪くなったりする」といわれてきました。
 しかし、低血糖で倒れたのではないということは、測った血糖値が正常であることから分っています。朝礼で倒れるのは、夜更かしのために自律神経の働きが悪くなって、脳に血液が流れにくくなったことが原因です。

 朝食を食べない人の体調が午前中よくない、というのも、睡眠時間が少ないことによるものです。睡眠時間が少ないから、朝食を食べないし、体調がよくない、のであって、「朝食を食べないから体調がよくない」のではありません(血糖値が正常なのは健康診断の血糖値を見ると分かります)。

 「夜寝る前はカロリーを使わないから食事を減らす」というのも、もうひとつの無理なカロリーの減らし方です。また、仕事がいつも遅くなる人に、体重を減らすことをあきらめさせる原因になってもいます。

 睡眠中でも体温維持や脳・心臓の働きには多くのエネルギーが使われていますし(基礎代謝)、夜摂ったエネルギーは、次の日の活動にも使われます。ですから、夜遅く食べたからといって、体重が減らないということはありません。

 「朝食を摂る」、「夕食を控える」というのは、どちらも「活動に使われるカロリー(エネルギー)が、その前に摂った食事だけでまかなわれる」という誤った考えからきています。
 体には「エネルギーを供給・貯蔵するしくみ」がありますから、1日24時間で考えると、「エネルギーを切らさないために」食事を摂ったり、「余分なエネルギーを摂らないために」食事を控えたりする必要はありません。

 ですから、食事のカロリーを減らすときには、どの時間帯の食事でも減らすことができるし、減らした分だけ体重は減ります。

警告 糖尿病の薬や注射で治療を受けている人は低血糖発作を起こすことがあるので、このサイトの方法に限らず、食事や運動の習慣を変えるときには、必ず主治医の指示を受けてください(それ以外の人は全く心配要りません)。

「減らす食事」の選び方

体重が減り始めていても途中で挫折してしまった、というときの原因で多いのは、生活環境(対人関係)によるものです。無理なく続けるためには、これらの要因を重視して、減らしやすい食事を選ばなくてはなりません。
生活リズムについての知識も、無理を減らすために役立ちます。

 どの食事を減らしてもよい、ということが分かったので、実際に楽に減らせて、挫折が少ない食事がどのようなものかを考えてみます。

 体重が減り始めていたが途中で挫折した、という人に聞くと、職場の人や家族に影響を受けたから、ということがよくあります。このような行動に影響を与える対人関係を「人目」ということができます。

 私は人目など気にしないという人には、「電車の中で化粧をする女性は人目を気にしている」という話があります。化粧をしているのは、(電車の中にいない、気持ちが近い)だれかの人目を気にしているからだというのです。人目を気にしない例とされている場合でさえ、影響を受けて行動(化粧)しているのですから、ふだんの行動で人目を無視することはできません。 反対に、この「人目」さえ気にならなければ、それだけで何か行動を起こすことは、うんと楽になるでしょう。

以下の食事はどれも、減らしやすい食事です。

(1)「食事の人目が気にならない」食事は、減らしやすい食事です。
 昼食で職場の同僚が定食を食べている前で自分だけ毎日盛りそばを食べたり、差し入れのお菓子を食べなかったりすることには、抵抗がある人が多いと思います(人目が気になる)。
 家庭で「食事を減らす」言うと、心配した家族から「これを食べてはだめ、あれも駄目」と言われそうな人や、反対に「食事を減らすと体に悪い」と言われそうな人もいるでしょう(人目が気になる)。
 このような人目が気になる食事を減らそうとすると、早晩挫折することになります。反対に、人目が気にならないという食事であれば、それだけで減らしやすい食事だということができます。

(2)「食事の人目が気になる」食事は、減らしやすい食事です。
 同じ人目でも、それが気になることを利用して減らしやすくなる食事があります。
 減らした食事の後におなかが空いても、もし仕事中なら人目があるので間食は自由に摂れないことが多いでしょう。この状況は、食べずに済ますために有利に働きます。
 家事も、家族という最小の社会での社会生活と考えることができます。誰も見ていないときに家事をしても、その仕事を必要とする家族の「人目」があります。
 食事の、人目のおかげで食べずにいやすい場合、その食事は減らしやすい食事です。

(3)その「食事後に元気」な食事は減らしやすい食事です。
 「人目」以外に、1日の生活リズムを考えると、減らしやすい食事があることが分かります。
 午前中など、頭や体が元気な時間帯は、おなかが空いて間食への誘惑があっても、仕事や趣味などほかのことをして、食べずにいることができます。上に書いたように、夜寝るのが遅くて朝食が食べられない人は、無理に食べても元気が出ることはないので、食べなくても大丈夫です。
 一方、その食事の後に元気がなくなってくる(理性が働きにくい)時間帯の食事を減らすと、間食をしないで済ますのが難しくなります。たとえば、早い時間に摂る夕食を減らすと夜食への誘惑と戦うのがつらく、そして、しばしばその戦いに負けることになります。このような食事は減らすべきではありません。

減らす食事は2食まで?

はい。3度の食事を全て減らすと、毎日の食事による満足感がなくなり、カロリーの減らし方も不確実になるので、減らす食事は1食か、多くても2食までです。

 ふだんの食事を変えるとき、「全ての食事を少なめにする」という方法はうまくいきません。
 減らしにくい食事、たとえば、先ほどの同僚といつもどおりに定食を摂るとき、残して少なめに食べるというのは無理があります。はじめは減らせても、いつのまにか元に戻ってしまいます。家で食べるときも同じことになるでしょう。

 減らしやすい食事を必要なだけ減らしておけば、減らしにくい食事は、たとえアルコールが入っていても、夜遅く食べても、今までどおりでかまいません(ほかの食事で減らしたという油断で増えないようにする注意は必要です)。むしろ、どの食事にも満足感が伴わなくなって挫折の原因になると困るので、そのままにしておかなければなりません。

 また、どの食事も少しずつ減らすと、正確にカロリーを減らすことが難しくなります。確実に減らすためには、細かいカロリー計算が必要になり、これも挫折の原因になります。

 ですから、「食事から減らすカロリー」は、3食均等に割り当てるのでなく、「減らしやすい食事」に集中して割り当てなければなりません。

表の中の「はい・いいえ」にすべてチェックを入れて[決定]ボタンを押すと、どの食事が減らしやすいか、その順序が分かります。

2. 減らしやすい食事 朝食 昼食 夕食
食事・人目が気にならない はい いいえ
はい いいえ
はい いいえ
食事・人目がある はい いいえ
はい いいえ
はい いいえ
食事・元気 はい いいえ
はい いいえ
はい いいえ
押してください
合計点[減らしやすい順序] ?点 [?番] ?点 [?番] ?点 [?番]
食事・人目が気にならない とは(はい=5点:得点が高い=減らしやすい)
 食事のときに同席の同僚がいたり、家族に「その食事を減らすと体に悪い」と言われたりすると、食事を減らし続けることが難しくなります。 自分が思い通りに食事を変えることができそうなときは「はい」を選んでください。
食事・人目がある とは  (はい=2点)
 反対に、その食事の後、職場などで人目があれば、自由に間食を摂ることはできません。また、その食事の後にする仕事があれば、間食を摂らずに済ませてしまうことができます。仕事の結果を必要とする人の目があるからです。
 人目が気になり、次の食事まで間食せずにいられそうなときは「はい」を選んでください。
食事・元気 とは  (はい=1点)
 1日のうち元気な時間帯(例えば午前中)のほうが、疲れてきた時間帯(例えば夜)よりも空腹をつらく感じにくいものです。 次の食事まで元気であれば、間食などへの誘惑があっても、食べないでいることは難しくありません。 反対に間食や夜食を摂るのは疲れて判断力が鈍ってきた時間帯が多いです。
 その食事を減らしても、次の食事(または寝るまで)間食せずにいられそうなときは「はい」を選んでください。
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3. 手間 を減らす